沈没した「スパコンの戦艦大和」に補足して
引っかかった点が1つ。
「日の丸技術」の開発には意味がない:スパコンというのは、きわめて特殊な科学技術用コンピュータであり、世界で年間数十台しか売れないものだ。富士通がクレイの4倍以上のコストのスパコンを開発しても、世界市場では売れない。日本の大学でも中規模のスパコンをリースで利用するのが常識であり、このような「日の丸技術」の開発にはビジネス的な意味もない。
池田信夫 blog : 沈没した「スパコンの戦艦大和」
これは日本だけに限らない。スパコンというものは、きわめて特殊な科学技術用コンピュータであり、世界で年間数十台しか売れないものだ。IBMがクレイの4倍以上のコストのスパコンを開発しても、世界市場では売れない。世界の大学でも中規模のスパコンをリースで利用するのが常識であり、このような技術の開発にはビジネス的な意味もない。
では、なぜIBMはスパコンを開発するのか。それはビジネス的に成功したからだ。なぜ成功したと言えるのか。現に売れているからだ。なぜ売れたのか。それはIBMだからだ。
つまり私が言いたいのは、ビジネス的に成功するか否かは参入障壁を乗り越えられるか否かにかかってくるということだ。スパコンの規模的に最も近い事業が、H-IIロケットシリーズだろう。開発規模、年間生産台数、海外では成功し日本では苦戦している構図など、多くの点が似通っている。
それでは、これらビジネス的に成功しない商品に関する技術は失われるべきなのだろうか。たとえどれだけ素晴らしい技術であってもビジネス的に成功しなければ無用の長物になり、淘汰されるべきだということができる。もちろん、淘汰されたからといって素晴らしくない技術であるということはできない。デファクトスタンダードという言葉があるように。
素晴らしい技術がビジネス的に保護されないのであれば、それを保護する役目は国家以外には居なくなってしまう。重要無形文化財のように保護し発展させるために温存させる必要がある。
けど池田先生はそれを認めてくれそうにない。ちょっと残念だ。
追記
type-100 日本が保護しなくてもIBMが勝手に開発して勝手に利益出してるわけで、「何故国産が必要か」についてちゃんと答えなくてはいけないと思う。
http://b.hatena.ne.jp/type-100/20091115#bookmark-17354856
富士通が勝手に開発して勝手に利益出せるなら、もちろん国は保護しなくても大丈夫だよね。ただし現実には厳しいわけで、それは技術力ではなく知名度や実績やその他諸々の諸経費に依存するから。顧客は自分の要求さえ満たせればどんな技術を使おうが気にしないからね。
国産がなぜ必要かに関しては、答えは明白。国産を名乗れるものが少なくて寂しいからだ。
日本にあるものと同じようなものは何でも外国にある。地球シミュレータ、H-IIA、MRJ……経費のかかる一発モノは日本では完全に後手に回っている。YS-11ですら売れなかった。参入障壁を越えるのが、日本人は圧倒的に下手だからだ。
これらを「外国にあるから不要だよね」と言うなら、じゃあ日本には何が残るのか。1次産業と2次産業は壊滅する。国が保護しないかぎり、売れないものを作ることすらできない国が日本というわけだ。農業が最も良い例じゃないか。
『技術立国日本』というと聞こえが良いかも知れないけど、自分としてはこの言葉を「技術しか外国に売るものがない国、日本」と捉えている。これを否定する人は、ほかに何が売れるのか教えてほしい。肉体労働ですら中国ベトナムに負けているのだから。