SIer にとっての最新技術
最新技術を一式、SIer に与えるとする。
まずは RoR を与えてみよう。「RoR で作れば生産性が高まる」という噂を聞いて、SIer は興味を持つ。そして【自分のやりたいことが RoR で実現可能か否か】を調べはじめる。実現できなかったら【どのようにすれば RoR で実現できるか】を調べはじめる。そして RoR は SIer に使われずに終わる。SIer の生産性は元のままだ。SIer がしたかったことは、独自の規約を作ることだった。独自規約が RoR の規約と衝突し、結局のところ RoR は使用されたが活用はされなかった。
次に、適当な KVS を与えてみる。実行速度が上がるという噂を聞いて、SIer は興味を持つ。しかし KVS から手を引くのはとても素早かった。高度な SQL が動かせず、また諸々の政治的理由により【安価な】 KVS は【高価な】 RDBMS に敵うことはなかった。
最後に、SIer にインターネットを与えてみる。これは色々と SIer も活用しているようである。まず第一に、サーバ上で動作している COBOL プログラムのフロントエンドとして使用することができた。HTML は貧弱だが、AJAX を用いることでダム端末の代わりに使えた。たくさんのブラウザに対応させる必要がある問題については、単一ブラウザの単一バージョン以外は動作対象外にすれば問題が無い。そのためハードウェアごと納品することで円満解決した。ハードウェアごと納品するという80年代のしきたりが踏襲できて満足だった。
SIer は最新技術を与えられると「それを使うと何が作れるか」をスキップして「自分がやりたい事をどうやって行うか」を考えはじめる。やりたい事が行えなければ、容赦なく最新技術をカスタマイズしていく。たとえカスタマイズによってフレームワークが先祖帰りしたとしても、それは SIer にとっては本望なのだ。
「オープン系システム」という言葉がある。SIer がしばしば好んで使う言葉だが、これは結局のところメインフレームを置き換えるだけのものでしかない。単にメインフレームが高すぎて売れなくなったから、しぶしぶ使っているだけのものだ。オープン系システムにはメインフレーム以上のことは何一つ期待していない。SIer は土俵の違う基盤の上で、窮屈な戦いを迫られている。
いま、SIer は『クラウド』というキーワードに惹かれている。SIer は、メインフレームの代わりとしてのクラウドに、非常に注目している。しかし COBOL の動作をサポートするようなクラウドが出てくる気配は、まだない。
そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。COBOL.NET は WindowsAzure で動作するっぽいね。なんとも息の長い最新技術だこと。