再びの論点整理(1)/『実名制』のレベル分け

これを見て、何度目かの論点整理を行ってみる。*1

現状の問題点

小倉先生が問題としていることは2点。

  1. ISPASP が、故意に発信者情報を隠すという事例
  2. 匿名性による安心感から、発信者が過激な発言を行いやすくなっている現状

枝葉はともかく、大筋だけを見た場合には以上に誤っている事柄は無いはず。またこの2点については事実であり、匿名派も納得している事柄であることは確か。

『実名制』のレベル分け

その上で、小倉先生が提案する解決策は 「発信者情報を今よりも照会しやすくする」 こと。ここで、どれだけ発信者情報を照会しやすくするかについては匿名派でも小倉先生の意図を測りかねている。おおよそ考えうるパターンを列挙すると

  1. 実名公表制 …… 情報発信に際し常に実名を公表する
  2. 実名登録 ID 公表制 …… 実名と ID を結びつけ、情報発信に際し常に ID を公表する
  3. 実名登録 ID 認証制 …… 実名と ID を結びつけ、情報発信に際し常に ID を確認する*2

の3段階となる。小倉先生も上記のうちのどれかを考えているであろう。

なお、実名が真に正しいかどうかを確認するかどうかで上のパターンをさらに分割するならば、

  • 実名が正しいことを確認する
    1. 強い実名公表制
    2. 強い実名登録 ID 公表制
    3. 強い実名登録 ID 認証制
  • 実名が正しいことを確認しない
    1. 弱い実名公表制
    2. 弱い実名登録 ID 公表制
    3. 弱い実名登録 ID 認証制

の6パターンにまで詳しく区分することが出来る。
ちなみに、池田先生は『実名公表制』は良くないと考えている ので、『実名登録 ID 公表制』または『実名登録 ID 認証制』のどちらかが適切であると考えていると思われる。*3

小倉先生が提案する解決策に対する周囲の理解度

泥棒に「窃盗罪について反対ですか?」と聞けば「反対」と返事が帰ってくることは奇妙な話ではないため、匿名の卑怯者に反対されたから解決策を白紙にする という行動はむしろ適切ではないだろうと考えられる。
なお、ここでプロバイダ責任制限法の改正へと話を戻しても構わないとは思うが、ここは実名制に関する周囲の理解度を考える。

おそらく、現在ネットに接続しているユーザのうちの大多数は、自分の実名で契約した ISP 経由で接続しているか、それとも自分の実名を照会してある会社の社内 LAN 経由で接続しているか、あるいは実名を公表してネットカフェなりを使用して接続しているものと推測できる。

つまり大多数はどこかで自分の実名を他人に預けていることから、『強い実名登録 ID 認証制』 に関する抵抗は小さいと思われる。むしろ ISP に接続し IP アドレスを付与されること自体が 『強い実名登録 ID 認証制』 の一種であると考えられることから、大多数のユーザは 『強い実名登録 ID 認証制』 に対しそれほどの抵抗は示さないだろう。*4

また、ブログ等を書いたり mixi などの SNS を用いるならば、ある固定された HN が与えられているだろうから、『実名登録 ID 公表制』 に対する抵抗感も、予想されるより低いのではと推測することも可能である。

『実名制』のレベル分け、の追記

ふとここまで考えて、『サブ ID を認めるか否か』 でもさらに 『強い実名登録 ID 公表制』 を区分できるのではないかと思い立った。
つまり、

  1. 1つの実名に対し1つの ID のみ認める*5
  2. 1つの実名に対し固定数の ID のみ認める*6
  3. 1つの実名に対し任意数の ID を認める

の3種類を。これに関する考察とまとめは明日に延ばそうと思う。


明日は実名制を導入した際に発生する問題点についてまとめる。
また、小倉先生を取り巻くディスコミュニケーションの本体についても。もしかしたら、dis られたことに対する小倉先生の過剰反応が更なる dis を呼ぶという悪循環に陥っているのかもしれない……。

*1:出来る限り比喩は使わずに。比喩は「その比喩が適切かどうか吟味する」必要があって面倒だし

*2:公表は必須ではない

*3:ちなみに現在の池田先生のブログは、弱い実名登録 ID 認証制を取っている

*4:認証局の信頼性が低いならばもちろん抵抗は示すだろうが、それはまた別の話である

*5:おとなり韓国システム

*6:はてなシステム