『勝手口』の論理

小倉先生と ekken さんの書き込み見ていたら混乱してきたのでひとまず整理。

オフラインで身体的・精神的・経済的な被害に遭わないためにも個人情報を自らばら撒くような、小倉弁護士実名主義はめちゃくちゃ危険だ、ということ。

ネット上の加害行為は、ネット上だけにとどめておけば安心だよね。:ekken

ネット上で誹謗中傷や悪質なデマの流布を行うことのリスクを高める方向でしか、何も解決には向かいません。

「ネット上でなら加害行為をしても安心」な社会では、ネット上に積極的に実名を掲載しなくとも安心はできないのです。: la_causette


だいぶ込み入った話になってますが、元をたどれば実名制と匿名性を天秤にかけているだけなんですよね。

  • 小倉先生は、天秤を実名側に振らせました。
    • 攻撃者に個人情報を渡すリスクを軽く考えた
    • 攻撃者に自制心を高めさせることを主目的として重く考えた
  • ekken さんは、天秤を匿名側に振らせました。
    • 攻撃者の自制心を向上させることを軽く考えた
    • 個人情報を広く一般に公開するリスクを重く考えた

で、ゆ〜らゆ〜らと。後は互いの考えに反論し合っているだけのはず。


ここで面白いのは、小倉先生の対策は攻撃者主体で ekken さんの対策は被害者主体、ってことなんですよね。なるほど。改めて書いてみると、小倉先生の対策は被害者を擁護し攻撃者を非難する良い意味で弁護士らしい考えですね、と少し思ったり。


要は勝手口の論理なんですよね。小倉先生は 『戸締まりしなくてはいけないのはおかしい。泥棒をまずは何とかするべき』 って考えで、ekken さんは 『泥棒をなんとかするのも大事だが、まずは戸締まりをきちんとするべき』 って考えで。
小倉先生のほうが社会としては健全ですが、実状に合っているのは ekken さんのほうであるのは言うまでも無いわけで。姿の見えない泥棒に説教するより、鍵の1つや2つを買ったほうが手っ取り早いですから。*1 *2 *3


この勝手口の論理は、「戸締まりしなかったからといって必ず泥棒が来るわけではない」とか「戸締まりしたとしても泥棒に入られることもある」って考えも比喩できて、自分はちょうど良いとおもったり。
けど 『被害者の自制心を高める』 がうまく表現できないな。まあ正確性を期するつもりもないから別に良いか。


2つの対策は実名・匿名を基にした場合に相反するので、双方を納得させるには小倉先生が実名制以外の対処方法を見つけるしかなさそうです。例えば顕名制とか。要はトレーサビリティの強化が急務なのであって、実名制導入は必ずしも必須ではない。双方の妥協点はきっとあるはず。



ところでもっと面白いのは、小倉先生はネットの全ユーザを暫定攻撃者として見ているっぽい、ってことなんですよね。実名制で自制心を高める対象は、小倉先生はネット全域を対象として考えているっぽいですし、加えてネット初心者も対象であると明言していますし。
ekken さんはその逆ですか。暫定被害者として見ている。同じく自分も、ユーザを暫定被害者として考えてたり。


ちなみに自分は、相手の個人情報を故意に流出させてまで初心者の自制心を高めさせるくらいなら、もっと別の方法を模索します。
というか、そもそも流出させた個人情報は自分ではコントロールできませんから、「被害に合う可能性は低いよ」とか言われても、流出させた以上当人にはどうしようもありません。


追記:ブックマークに返信するよ!

yellowbell わかりやすく、例えもいい。/小倉先生の被害者救済をほっといた実名への頑なさを見ていると、「弁護士・小倉秀夫」の現実社会でのアドバンテージを、ネットでも求めているだけなのではないかと思い始めています。

はてなブックマーク - 『勝手口』の論理 - SiroKuro Page

小倉先生の胸中は本人にしか分かりませんが、自分は小倉先生の行動は弁護士として妥当なんじゃないかと思ってます。弁護士って被害者を救済するために加害者を追及するイメージありますから。


 

*1:泥棒に説教するのが無駄だというつもりは無い。念のため

*2:あ、今回の”鍵”というのは、スルー力ではなく、個人情報管理能力のほうです

*3:けど、両立できるなら両方やっちゃうべきなんですよね。泥棒を何とかして鍵をかける。これ最強